7期の会社のテーマは、「ゆっくり、急ぐ」と掲げています。

これについて、組織の行動スピードとストレスについて考えることがあったので、言語化しておきます。

会社が進化して関係者に価値提供するためには、行動スピードが必要です。考え続けるだけでは、機会を逃してしまうこともあります。事業を守るためにも、未来につながる挑戦をするためにも、一定の速度で動き続ける必要がある。

一方で、

組織のスピードが上がるほど、関わる人のストレスも増えやすくなります。

このことを考えていて、車の運転に似ているなと思いました。

運転席に座っている人には、前の景色が見えています。
どこに向かっているのか。この先で曲がるのか。スピードを上げるのか、少し落とすのか。
ある程度、自分で予測しながら、コントロールすることができます。

ですが、
後ろの席に座っている人には、前の景色が見えづらい。
急に曲がれば、体が振られる。急にスピードが上がれば、不安になる。
急ブレーキが続けば、疲れてしまう。場合によっては、車酔いしてしまうこともある。

組織も、これに近いのかもしれませんね。

代表やリーダーには、少し先の景色が見えていることがあります。向かう先も、スピードも、ある程度自分で決めている。だから、自分の中では「このくらいの変化は必要だ」と思える。

でも、
同じスピードで走っていても、後ろに乗っている人にとっては、見え方が違います。
なぜ今、曲がったのか。どこに向かっているのか。このスピードで大丈夫なのか。
それが分からないままだと、変化そのものよりも、予測できないことがストレスになります。

だから、
運転席に座っている人ができる努力は、行き先と予測をこまめに共有することなのだと思います。

「この先、少しカーブがあります」
「ここから少しスピードを上げます」
「目的地はここです」
「途中で一度、休憩を入れます」

そう伝えるだけで、後ろの席にいる人の緊張は少し和らぐ。

スピードを出すことが悪いのではなく、何も伝えずに急ハンドルを切ることが、ストレスになるのだと思います。

このことを考えていて、
以前読んだNetflixの組織文化の本『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』を思い出しました。

Netflixの文化には、Context, not Control という考え方があります。直訳すれば、「管理ではなく、文脈を」。つまり、細かく管理して動かすのではなく、判断できるだけの背景や目的、情報を共有する。一人ひとりがよい判断をできるように、文脈を渡す。

これは、今回考えていた「景色を共有する」という話に近いなと感じました。

人は、背景が分からないと不安になります。
理由が見えないと、ただ指示されたように感じます。
目的地が見えないと、自分の仕事がどこにつながっているのか分かりにくくなります。

反対に、
文脈が見えると、自分で考えやすくなる。優先順位を判断しやすくなる。仕事が少しずつ、自分ごとになっていく。

ただし、
Netflixの文化をそのまま真似したいわけではありません。
Netflixは、かなり高い自己管理能力や高いパフォーマンスを前提にした組織文化です。

ただいまが目指したいのは、
そこに加えて、対話や育成、一人ひとりの成長速度へのまなざしを含んだ形です。

だから、ただいまの言葉にするなら、

管理ではなく、景色の共有。

前と後ろが固定された組織にはしないただ、ここで気をつけたいことがあります。

「運転席にいる人が、後ろの席の人に丁寧に共有する」ことは大切です。
でも、それだけではまだ、前を見る人と、ついていく人という構造が残ってしまいます。

本当に目指したいのは、運転席と後部座席が固定された組織ではありません。
誰か一人だけが前を見て、他の人は揺れに耐える。そういう組織ではなく、できるだけ多くの人が、行き先や景色や道路状況を一緒に見られる組織にしたい。

もちろん、すべてを全員で決めることは現実的ではありません。
役割として、最後に判断する人は必要です。責任を持ってハンドルを切る人も必要です。

でも、
その人だけが景色を独占してはいけない。

いまどこを走っているのか。なぜこの道を選んだのか。この先にどんなカーブがありそうなのか。どこで休憩するのか。どこに向かっているのか。

そうした景色を、できるだけみんなで見られる状態をつくりたい。

「知らされる組織」ではなく、「一緒に見ている組織」。

「ついていく組織」ではなく、「ともに進む組織」。

そんな感じ。この状態に近づくほど、組織のスピードは誰かのストレスではなく、納得感を伴った前進になっていくのだと思います。

そのためには、発信者側の努力だけでは足りません。
リーダーや発信者側は、行き先を伝える。
背景を伝える。優先順位を伝える。これから起こりそうな変化を伝える。

これは、当然必要です。

でも同時に、
受け手側にも、聞きにいく努力が必要です。

分からないことを聞く。違和感を質問にする。優先順位を確認する。自分の認識が合っているかを確かめる。

聞くことは、迷惑をかけることではありません。聞くことは、仕事を止めることでもありません。

むしろ、聞くことは、自分の働き方をよくするための行動です。

「これは、なぜ今やるんですか」
「AとBでは、どちらを優先するべきですか」
「ここまで進めてから確認でよいですか」
「私はこう理解しましたが、合っていますか」

こうした質問が自然に出る組織は、強いと思います。

聞くことで、背景が見える。背景が見えると、判断しやすくなる。判断しやすくなると、仕事が自分ごとになっていく。

だから、合言葉にするなら、

伝える努力と、聞きにいく努力。

この両方が必要なのだと思います。

ただ、「分からなければ聞いてね」だけでは弱いとも感じています。

質問できるかどうかを、個人の性格や勇気に任せてしまうと、聞ける人だけが聞く組織になります。遠慮する人は、分からないまま抱えてしまう。違和感を言葉にできない人は、不安を内側にためてしまう。

だから、会社の仕組みとしても機能させたい。

たとえば、

  • Slackで相談しやすい型をつくる。
  • 会議の最後に確認時間を入れる。
  • 決定事項、担当、期限を残す。リーダーが目的、背景、優先順位を共有する。
  • 評価や育成項目にも、質問・確認・共有を入れる。
  • 質問や共有を、特別なことにしない。仕事の標準動作にする。

質問できるかどうかを個人の勇気に任せず、質問と共有が自然に起こる仕組みにする。
それが、組織の行動スピードと安心感を両立するために必要なのだと思います。

この話は、個人の成長にもつながりますよね。
組織としては、必要なスピードで前に進む。事業を守り、未来をつくるために、会社の行動スピードは落としすぎない。

でも、
それは一人ひとりの成長スピードまで、常に最大にし続けるという意味ではありません。

個人の成長は、受験勉強に近いところがあります。

どの科目を伸ばすのか。どこに苦手があるのか。今は基礎を固める時期なのか。
それとも、少し難しい問題に挑戦する時期なのか。どのくらいの負荷をかければ、成長につながるのか。

それは、人によって違います。

スピードを上げることだけが、美しいわけではありません。

大切なのは、自分の努力の方向性を見定めることです。

そして、その方向性やペースを、自分で考え、自分の言葉で意思表示すること。

「今はここを伸ばしたいです」
「この仕事は挑戦したいです」
「ここはまだ不安なので確認したいです」
「今の業務量だと、優先順位を相談したいです」

こうした言葉があると、仕事は受け身ではなくなります。

ただ与えられた仕事をこなすのではなく、自分の成長や働き方を自分ごととして考えられるようになる。

もちろん、会社は、組織として前に進みます。でも、その中で一人ひとりがどのように成長していくかは、本人の意思表示と対話によって調整していく。

その両方がある状態をつくりたいと思います。

ぐるっと、話は戻りますが、

7期の経営計画書では、「ゆっくり、急ぐ。」という言葉を掲げました。
守るべきものを守りながら、未来につながる前進は止めない。
最近感じていた、組織の行動スピードとストレスの話は、まさにこの言葉の実践なのだと思います。

ただ急ぐのではなく、景色を共有しながら急ぐ。
ただ丁寧に立ち止まるのではなく、聞き合いながら前に進む。

そのために必要なのが、発信者側の「伝える努力」と、受け手側の「聞きにいく努力」です。

組織は、必要なスピードで前に進む。
でも、一人ひとりの成長は、本人の意思表示と対話によって支えていく。

管理ではなく、景色の共有。指示ではなく、文脈の共有。我慢ではなく、質問と意思表示。

そんな仕組みを、会社の中に少しずつ増やしていきたいです。

景色を共有しながら、ゆっくり急ぐ。

ただいまらしい前進の仕方を、これからもつくっていきたいと思います。