スタンフォード大学に設立されたNPO法人「ポジティブ・コーチング・アライアンス(以下PCA)」は、「勝つこと」と「人間的成長を促すこと」の両立を目指す「ダブル・ゴール・コーチング」を提唱しています。この組織が実践する、5対1の“効果的な評価と助言”は、全米で700万人以上の学生に影響を与え、若者向けスポーツコーチのスタンダードとなっています。
スポーツ指導において、ほめることは重要です。ただし、「結果」だけでなく「プロセス」に目を向けることによって、挑戦を恐れない子どもたちを育てることができます。今、世界が求めているのは、結果至上主義ではなく「ELM(Effort・Learning・Mistakes)」=努力・学び・失敗を重視する指導者です。
PCAは、フィードバックの“黄金比率”として以下を提唱しています。
誠実で具体的なプラスの評価5回に対し、建設的なマイナス評価を1回。
もちろん、会社や組織のカルチャーによって適切な頻度は異なりますが、仲間にポジティブなフィードバックを送り合える文化が、成果を残せるチームの土台になることは間違いありません。
人が最も嬉しく感じる賞賛の内容は、「人柄」に関することだと言われています。
次いで、業績や成果です。そして、どんな褒め言葉であっても、事実に基づいていることが大切です。
例えば――
・○○さんは、思いやりのある方ですね。試合に負けた△△さんを元気づける言葉をかけていて、素敵だなと思いました。(人柄)
・○○さんの正義感に感動しました。あの会議で、正しいことを正しいと伝える姿が本当に印象的でした。(人柄)
・○○さんの今期の業績は素晴らしいです。努力の成果がしっかり表れていますね。(業績)
・○○さんの論文、読み応えがありました。(業績)
・○○さんのお洋服、センスがあって素敵です。(持ち物)
・○○さんの万年筆、とても上品で印象的でした。(持ち物)
日頃から仲間に関心を持ち、相手の成長を心から願い、気恥ずかしさを乗り越えて、率直に伝える覚悟があるかどうか。
それが、賞賛の質を決めるのだと思います。
心に余裕がないと、なかなかできないことかもしれません。
でも、だからこそ意識して、「人の良さを見つけて伝える」ことを日々の仕事の中で実践していきたいと感じます。