僕は現在、茨城県日立市でコーヒーロースターとカフェスタンドを経営しています。
コーヒーは、中学2年生のころから大好きで、よく学校をサボっては純喫茶に入り浸っていたことを懐かしく思います。コーヒーって、とても魅力的な飲み物です。
世界の生産者の方々が、天塩にかけて育てたコーヒー豆を焙煎させていただき、消費側では、お客さまを豊かにする時間を演出してくれます。
そんなコーヒーを扱う職業として、インターネットや書籍に掲載されている産地の情報だけを頼りにするのではなく、実際に栽培地に足を運ぶようにしています。
生産者の方々と関係を築き、産地の状況や言葉にならない雰囲気を感じ取り、日本のお客さまにお届けしたいがためです。
今回は、国際NGOパルシックさんとご縁をいただき、10月末から約1週間、東ティモール共和国のコーヒー産地に滞在してきました。
現地では、海外のカッパー(評価員)と一緒に東ティモールトップ10のコーヒーを決める審査員を拝命しました。
一部とはいえ、自分の意見が、農家さんの生活の一部に寄与することを実感する、責任ある経験をさせていただきました。
また、集落にも宿泊し、農家さんや加工業者のリアルな悩みや考えに触れることで、これからの自社のコーヒーに対する考え方をイメージするきっかけをいただくことができました。
少しコーヒーとは話題が外れるのですが、この旅をきっかけに、「幸せとは」なんて、 大きなテーマについても考える時間をいただけました。
パルシックさんによると、東ティモールでは、およそ4万5000世帯の農家がコーヒー生産を主な収入源にしているといわれます。
一家族あたりの構成人員は平均6名、すなわちおよそ27万人が直接コーヒー生産で食べていることになりますね。
一家族当たりの所得は年間127ドルから200ドルで、そのうち90%がコーヒーからの所得といわれる。
つまり、とくに高地での自給農業を補足する現金収入を得るほとんど唯一の道としてコーヒー生産があると考えられます。
東ティモール全体の一人当たりGDPは2,741ドル(Source:worldbank.org2021)ですので、
農村部の人が都市部で生活することは、経済的に困難なことが容易に想像されます。
例えば、教育。15歳までの義務教育が無料で提供されているとはいえ、学校生活にかかる備品の費用により通えない子供が一定数いる。
大学進学ともなると、国立大学で半期約30ドルの学費であり、これが私立になると半期で100ドル以上となる。
もちろん、経済力や教育進学が、その土地で暮らす人々の幸福に直接繋がるとは言えません。
ですが、経済的な理由によって、不本意に将来の選択肢を狭められてしまうことは、やはり悪い格差なのだなと。(もう少し、産地の方と幸福感について対話をしたかったですね。)この国は、長い植民地支配をうけた結果、あらゆるものを輸入に頼らざるをえません。この国にとって、コーヒーは貴重な換金輸出農作物です。世界中で愛されるコーヒーが育つから、海外の人が訪れる大きな理由になる。世界のコーヒー市場向けに品質を高めつつ、収穫量をあげることができれば、その分所得は増えていく。収入があがることで、生きる選択肢が増えることは幸福に繋がると思います。
しかしながら、はたしてそれが本当に農家さんの幸せに繋がるかと言われれば、はっきりとはわかりません。
弊社の取り組みは、まるで砂漠に水を一滴垂らすレベルかもしれませんが、
コーヒーのサプライチェーンの中で仕事をさせていただいている者として、貢献の仕方を考え続けていきたいと思います。
素晴らしい時間をつくってくださったパルシックの方々に、あつくお礼を申し上げます。