危機こそ、自分の解釈を疑う。透明性だけでは意見が言える組織にはならない。
最近、組織コミュニケーションについて深く考えさせられる出来事がありました。
詳細は書けませんが、自分自身の課題にも、組織づくりにも、大きな学びがあったので記録として残しておこうと思います。
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危機こそ、自分の解釈を疑う
ここ2か月ほど、久しぶりに精神的な負荷が続いていました。
僕は、自分の精神状態を把握する一つの指標があります。
今回はレベル2。
無意識にまぶたがピクピク動く症状です。自律神経が乱れているサインで、「少し余裕がなくなっているな」と気づく目安でもあります。
要因はいろいろありますが、シンプルにやることに埋もれていることがずっと続いている状況です。
下りエスカレーターを下から走っているみたいな感じ。
少し自分を棚に上げた表現になりますが、
普段から坐禅をしたり、リフレクションをしているので、自分の認知と感情を客観視するトレーニングを続けています。
ありがたいことに「メタ認知が高いですね」と評価していただくことも少なくありません。
それでも、余裕がなくなると、人は簡単に物事を歪んで受け取ってしまうのだなと。
今回、それを身をもって感じました。
ある場面で、
「攻撃された」
と思ったことがありました。
でも、後から振り返ると正確には、
「攻撃されたと感じた」
でした。
事実と、自分の解釈。
この二つは同じではありませんよね。
リーダーは判断する仕事です。
だからこそ、自分の解釈を事実だと思い込むことが、一番危険なのだと改めて感じました。
今回、手帳に振り返りをしていて自分の中に残った言葉があります。
危機こそ、自分の解釈を疑うこと。
これは経営者として、忘れたくない姿勢です。
自分の成長課題として、訓練していこうと思うます。
透明性だけでは、発言は増えない
今回の出来事をきっかけに、組織コミュニケーションに関する研究を改めて読み返しました。
その中で、一番印象に残ったことがあります。
情報の透明性が高い組織ほど、意見が言いやすいとは限らない。
これは、自分にとって意外な発見でした。
僕はこれまで、組織の透明性をとても大切にしてきました。
- 経営計画書を共有する
- 数字や重点方針を公開する
- カレンダーを共有する
- 定例会議の議事録をオープンにする
- 業務連絡は基本的にSlackで行う
- 個人情報や機密情報を除き、できるだけ情報を公開する
これらは今後も続けていきたいと思っています。
ただ、一つ見落としていたことがありました。
代表がどれだけ忙しいか。どれだけ多くの案件を抱えているか。自分には見えてない優先順位があるよな。
そうした状況まで見えるからこそ、
「今は言わない方がいいかな。」
という配慮が生まれることがあります。
これは悪いことではありません。
むしろ、人として自然な思いやりです。
しかし、その思いやりによって、本来伝えるべき情報まで届かなくなることがあります。
透明性は信頼をつくります。
ですが、
透明性だけでは発言は増えない。
ここが今回、一番大きな学びでした。

個人の問題ではなく、組織の問題
「リーダーには意見を言いづらい。」
これは決して珍しいことではありませんよね。
組織行動論には Employee Voice(従業員の発言行動) という研究分野があり、「人はなぜ意見を言わないのか」が長年研究されています。
研究では、発言するかどうかは本人の性格だけではなく、
- 上司との関係(信用関係、受容力、コーチャビリティ)
- 権限の差(ヒエラルキーによる暗黙の了解)
- 発言による不利益への不安(自分の評価が下がる恐れ)
- 組織文化(進言することや発言権利の考え方)
など、多くの要因が影響するとされています。
また、「上司が実際に受け入れてくれるか」だけでなく、「受け入れてくれそうだと感じているか」が、発言行動に大きく影響することも報告されています。
つまり、人は、
「正しい意見かどうか」
だけではなく、
「今言って大丈夫だろうか。」
ということも同時に考えているのです。
僕自身もこの感覚はとてもよく分かります。
会社では代表ですが、別の社団法人では理事(=代表ではない)という立場です。
福祉法人では監事という社外の人の立場です。
その組織の代表がどれだけ忙しいか。どれだけ多くの情報を持っているか。組織全体を見て判断していることも分かっています。
だから、「これは今じゃないかな。」「もう少し整理してから話そう。」
そんなことが頭によぎることがあります。
要するに、
立場が変われば、自分も発言をためらう側になります。
だから、
世の中の組織に属する人が、リーダー陣に対して遠慮することも、ごく自然なことなのだと思いました。
努力していることは、この感覚を自覚しつつも、優先順位によってはリーダーの状況は無視して、強く進言するときもあります。
うまく伝わるときもあれば、もちろんからぶるときもあります。
ただ、気づいていても発言しないのは、組織の進化にとっても、関係者にとってもよくないと考えています。
個人の努力ではなく、仕組みで考える
今回、反省したことがあります。
僕は、
「もっと受容力のある人になろう。」
と考えがちです。おそらくコーチングやリフレクションのトレーニング、自分の価値観が影響しています。
もちろん、それはこれからも大切にしたい価値観です。
ただ、あたりまえなのですが、人には余裕がある日もあれば、ない日もあります。
だから、
リーダー個人の器だけに頼るのではなく、仕組みで支えることが必要なのだと思いました。
例えば弊社では、
* 安全に関わること
* ハラスメント
* ヒヤリハット
* 法令違反の可能性
* 重大なクレームや事故
これらは忙しさに関係なく、その時点で共有する。
一方で、
毎朝のデイリーミーティングは
「業務を漏れなく進める場」
週次定例は
「組織をより良くする提案や違和感を話す場」
というように、
目的を明文化していきたいと思っています。
長くなってしまいましたが、あと一つだけ続けます(笑)
意見を伝える力にも段階がある
今回振り返っていて、
意見を伝える力にも段階があるのではないかと考えました。

レベル0 無関心
組織の課題を自分事として捉えていない。
レベル1 違和感に気づく
「何かおかしい」と感じられる。
レベル2 違和感を言語化する
何が起きたのか、何を改善したいのかを整理できる。
レベル3 事実と解釈を分ける
「彼はやる気がない」ではなく、
「彼は、決められた期限までに連絡がなかった」
というように話せる。
レベル4 伝える手段を選ぶ
対面、電話、DM、定例会など、内容に応じて選択できる。
レベル5 タイミングを判断する
今すぐ伝えるべきことか、後でも十分な内容かを考えられる。
レベル6 対話に変える
「私の理解はこうですが、認識は合っていますか。」
という問いから始められる。
レベル7 組織の学びに変える
個人の問題で終わらせず、
「具体的な仕組みとして改善できることは何か」
まで考え提案ベースで進言する。
最後に
ぐるっと回って、僕が目指したい組織は、
何でも自由に言える組織でもなく、
何も言わずに空気を読む組織でもありません。
相手を思いやりながらも、
必要なことはきちんと伝えられる組織。
伝えられた側も、防衛的になるのではなく、一度立ち止まって受け止めようとする組織。
そして、
「誰が悪かったか」
ではなく、
「次に同じことが起きたら、もっと良くするにはどうすればいいか」
を考えられる組織です。
透明性は、一人ひとりがより良い判断をし、安心して対話し、組織をより良くしていくための手段。今回の出来事を通して、そのことを改めて学びました。
つくづく、一生学びだなあと感じます。
こうして立ち止まり、自分の考えを言葉にする時間は、やっぱり好きです。
なんだかまた一つ、人生を攻略する武器を手に入れたような気がしています。
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参考文献
* Morrison, E. W. (2011). Employee Voice Behavior: Integration and Directions for Future Research.
* Detert, J. R., & Burris, E. R. (2007). Leadership Behavior and Employee Voice.
* Schnackenberg, A. K., & Tomlinson, E. C. (2016). Organizational Transparency: A New Perspective on Managing Trust in Organization–Stakeholder Relationships.
* Edmondson, A. C. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.

